2015.02.16
こんにちは。新生児集中ケア認定看護師の大川直子です。
私は小児科病棟(小児医療センター)に勤務しています。NICU~小児科でのキーワードは「おうちに帰ろう」だと思っています。どんなに小さくてもどんなに医療的ケアが必要なお子さんでも、自宅で、地域のなかで育っていくことが大切だと思っています。
そのためには、病院職員だけではなく地域全体お子さんと家族を支えるための知識を研鑽していく必要があります。また医師・看護師、ソーシャルワーカー、理学療法士・作業療法士、保健師、訪問看護師、教育関係など様々な職種の関わりが大切になってきます。「私は病院の中のことだけしか知らなくてもいい」「うちに帰ったら家族だけでがんばるのが普通」というのはもう時代遅れだと思っています。
私は小児在宅看護研修のお手伝いもさせていただいています。最近は小児在宅に関する研修も仙台で開催されることが多くなってきました。興味のある方は、ぜひ参加してください。たくさんの学びがあると思います。 私が大好きな歌「かめの遠足」(作詞・新沢としひこ/作曲・中川ひろたか)のようにのんびりのんびりと子どもたちがそれぞれのスピードで成長していけるように手助けができればうれしいと思っています。ひとりひとり顔が違うように成長スピードも違って当たり前、人工呼吸器をつけているのだって一つの個性なのですから。
次回は、がん性疼痛看護の斎藤明美さんです。「がんの患者の痛みは治療できる症状であり、かつ早期に治療すべき症状である」と言われています。どのような活動をしているのかとても楽しみです。
2015.01.30
みなさん、こんにちは。緩和ケア認定看護師の大沼美智子です。
2015年になって早くも1ヶ月が過ぎ、1年で一番寒い時期になりました。最近はインフルエンザが大流行のようですが、皆様の体調はいかがでしょうか。
私は、認定看護師となってから8年目になります。
現在は東7階病棟(婦人科、乳腺外科)でスタッフの一人として勤務し、また、院内のがん看護に関する研修のお手伝いをさせていただいています。
東7階病棟には、がんの治療(化学療法、放射線療法、手術療法)を受ける方々が多く入院されます。その中で、がんの治療と同時に、疾患や治療によって起こる苦痛を軽減でき、治療を続けることができように、そして、その方に合った療養の場をみつけQOLが維持・改善できるよう、病棟スタッフと一緒に看護を実践しています。
写真は、1月19日、研修061の様子です。私から、総勢100名を超えるフレッシュナースのみなさんに、「いつでも どこでも緩和ケア ~がん看護と緩和ケア~」のテーマでお話させていただきました。この時間では、出席しているみなさんからも「緩和ケアに対するイメージ」を発表していただいたり、自分自身の「終末期に大切にしたいこと」を考え、意見交換していただきました。普段では同僚の「終末期に大切にしたいこと」など聞く機会がないためか、意見交換が弾んだように見えました。
少しシビアなテーマもありましたが、「がん看護・緩和ケアは診断された時から始まり、その人の希望を支え、QOLを維持していくことが大切」ということが伝わっていればいいな・・・と振り返っています。みなさんの研修振り返りをいかし、今後も、がん看護・緩和ケアについて伝えていけたら・・と思います。
2015.01.22
みなさん、こんにちは。不妊症看護認定看護師の髙橋恵美子です。
今回は少子化と不妊治療について、みなさんと考えてみたいと思います。
厚生労働省の人口動態統計によると2012年の日本の出生児数は103万3000人(前年の出生児数よりも17,806人少なくなっています)、死亡数は124万5,000人で、人口の自然増減数としては21万2000人の減少となっていました。これは、戦後最大の人口減少幅で、少子化も深刻さを増しています。
一方で、「子供を産みたい」と願って不妊治療を受けているご夫婦が急増しているのも事実です。みなさんの身近にも体外受精や顕微受精を受けているご友人や知人の方がいるとか、実際にご自身が取り組んでいるという方も多いのではないでしょうか?
2012年に体外受精など生殖補助医療(ART:Assisted Reproductive Technology)で生まれたお子様は37,953人でした。これはなんと、日本の全出生児の27人に1人がARTで生まれていたということになります。
ただし、ARTの妊娠率は25%程度。行えば簡単に妊娠できるというものではなく、身体的にも精神的にも大きな負担を伴うものです。年齢が上がるほど妊娠率も低下し、焦りや不安が大きくなることもあります。どんなに頑張ってもうまくいかないことも多いのです。
私たちは、不妊に悩むご夫婦がただただARTを受ければ良いとは考えていません。
ご夫婦それぞれの価値観やお気持ちを大切にし、ご夫婦が納得のいく選択をしていけるように、ともに考え、寄り添っていきたいと考えています。
最後に、結婚には適齢期がなくなり晩婚化・晩産化が進んでいますが、やはり人間も動物。安全に妊娠・出産するためには適した時期があります。将来子どもがほしい、今は無理だと先延ばしにされている方がいたら、是非考えてみて下さい。
あなたにとって、妊娠に適した時は今かもしれません。
次回は、緩和ケアの大沼美智子さんです。どんなお話が聞けるか楽しみです。
2015.01.09
みなさん、新年明けましておめでとうございます。救急看護認定看護師の安彦武です。昨年は消費税率8%へのアップや円安傾向の強まり、エボラ出血熱の流行、STAP細胞・号泣会見といった騒動など、経済面でも文化面でも様々な出来事がありました。今年はどんな年になるのでしょうか?
毎年のことですが、盆暮正月と世の中が休みになると繁盛するのが救急です。救急疾患には時節の特徴というものがあり、この時期でいえばスキーやスノーボードによるケガ、暖房器具による熱傷、餅による窒息(気道異物)、そしてインフルエンザ感染などがあげられます。特に今回の年末年始では、インフルエンザ感染が多かった印象があります。インフルエンザ感染のみであれば、必ずしも高度救命救急センターで診なければならない疾患ではありません。しかし、施設として役割、原疾患や加齢による免疫力の低下などから病状が悪化する場合は、十分に治療の適応となります。特に髄膜炎や脳炎が疑われる場合は、極めて迅速な対応が求められます。人情としては軽症~重症な患者さんまで分け隔てなく全て受け入れていきたいところですが、限られた医療資源を効率よく使用し三次救急施設としての機能を維持していくためには、患者さんの振り分け(トリアージ)が必要です。「救急医療現場における病態に応じた迅速な救命技術、トリアージの実施」は救急看護認定看護師の役割の一つなのです。
さて、ここからはトリアージという切り口から自分の仕事(役割)を説明します。トリアージは救急隊などPre hospitalで行う場合、ER型救急外来などIn hospitalで行う場合、災害時など多数傷病者が発生した場合、電話対応で行う場合などそれぞれの場面があります。共通して言えるのは患者さんの傷病の程度を判断することですが、重要なのは施設が提供可能な医療レベルを踏まえ、重症度・緊急度を評価し、重症で緊急性のある患者が後回しにならないようにすることです。そのため、救急疾患の病態を理解し、生命の危険性を判断でき、必要な情報を明確に伝達できるスキルが求められます。東北大学病院は三次救急施設なので、救急外来で多数の患者を一度にトリアージすることはあまりなく、電話トリアージが主になります。電話トリアージでは患者さんを視覚的にとらえられない分、問診によるフィジカルアセスメントを駆使して病態と緊急度・重症度を判断しなければなりません。インフルエンザを例に挙げると、病院に電話をしてくる患者さんやその家族は「インフルエンザだったら心配。」、「インフルエンザだったら一刻も早く熱を下げたい。」などを訴えます。私は感染症のプロではないので説明には限界がありますが、それでもインフルエンザの病態や治療に関してはある程度知っておかなければなりません。まずインフルエンザの治療薬ですが、熱が早めに下がるという効果は極めてクリティカルなタイミングが要求されます。ウイルスの増殖を妨げる薬なので、増殖中の48時間以内に使わないと効果はあまりないです。有熱期間を短くするということは、時間が経ってしまえば効果はあまりないのです。恩恵を受けられるのは発症24時間から48時間で、自力でねじ伏せる事ができず発熱期間が4日程度続く人くらいとなってしまうようです。病態によっては迅速に解熱しなければならないこともありますが、インフルエンザで解熱を焦って、つらい体でただ内服を処方してもらうがために病院へくることがいいことなのでしょうか?海外の報告で死亡率が高かったのは、呼吸困難を伴ったり、細菌感染を併発して超高熱が長引いてもほったらかしにしていた人達です。小児や高齢者や妊婦はじめ、肺炎を合併してしまった人、免疫能が低下しているようなハイリスクな患者さんであれば必要でしょうが。このようなことを踏まえてkiller symptomがないか確認し、得られたキーワードとなる情報から緊急度・重症度を判断します。判断した内容を考えられる病態に照らし合わせ、今後の経過と対応をある程度予測します。臨床で様々な決定・判断を行うために、事象に対して仮説→検証を繰り返し、賢明といえる行動を選択する際の思考過程を繰り返すのです。
立派なことを書いていますが、これらの対応は一様にはいきません。患者や家族に説明しても納得してくれず、電話対応に長時間とられることもあります。「検査だけでもしてくれないの?」、「明日は外せない用事があるので熱だけでも下げて欲しい。」、「何かあったらすぐ診てくれるって言われている!!」・・・etc。患者・家族と医療者との信頼関係が希薄な救急外来では、各々の意識に解離があり、客観的に状況判断を行う医療者と、医療者に多大な期待を持つ患者・家族との間に感情のずれが生じます。このような状況下で患者・家族のニーズが満たされなかった場合、それが更なる不満を生むことになります。そのため電話トリアージでは、接遇が救急医療全体に対する評価にも影響を与えることを念頭に置き、患者・家族から常に行動のすべてを評価されていることも意識して対応しなければなりません。
トリアージは救急医療全体から見れば構成要素の一つに過ぎません。一方で、一朝一夕に身につくスキルではありませんが,意識して日々をこなすことで確実に看護実践の中で力を付けることができるでしょう。今後も患者の異変などに対し先取りしたケアや医師へのrecommendationを行い、いち早く先を見据えたアセスメント,ケアの実践を行っていきたいと思います。自らの実践とともに重症患者へ対応できる看護師の育成が、私の使命(シ・メイ)です。ひつじ年だけに!!(笑)。
2014.12.15
年の瀬も押し迫ってまいりました。忘年会シーズン到来ですね。皆さん、体調管理は万全でしょうか。急性・重症患者看護専門看護師の井上昌子です。
突然ですが、みなさんは「記憶」をなくしたことがありますか?お酒が大好きな私は2回くらいあります。(若気の至りです。)私のようにお酒で記憶をなくすことは笑い話で済みますが、怪我や病気で入院の記憶が曖昧だったり、全く覚えていなかったりという時間が自分に存在するとしたら・・・皆さん、どうでしょうか?
集中治療室に入室された患者さんの中には、薬剤や身体的な問題からICU入室中の記憶が曖昧だったり、記憶が無かったり、また実際にはなかったことを記憶としてとどめてしまうことがあります。ICU入室中の苦痛な記憶が無い事は、私自身は良いことだと思うのですが、曖昧な記憶や、記憶が無かった時に自分は何をしていたのか不安になることもあるのではないでしょうか。麻酔を要する大手術や事故による受傷を経験した患者さんは、治療を乗り越えた後も心理的混乱を引き起こす可能性もあるのです。
私が現在関わっているTBIクリニック(外傷性脳損傷外来)には、脳外科医を中心として、臨床心理士、認定看護師、専門看護師等の多職種が活動しています。TBIクリニックには、交通事故や不慮の事故により頭部を受傷された患者さんがいらっしゃいます。その患者さんの多くは、事故の記憶はもちろん、救命センターに入室されていた記憶もほとんど無く「あの時は、気がついたら入院していて、一般病棟にいた」とおっしゃる方が少なくありません。患者さんの回復力や治療・ケアの結果、社会復帰をされた患者さんからは、救命センターでの記憶を聞けることは稀なのですが、その中で、回復された患者さんの過程や現在の様子を知る事で少しでも、今後関わる患者さんによりよいケアを提供することが出来るように、さらに、よりよい生活が過ごせるようにするには、どうしたら良いかと日々考えています。
専門看護師としての役割は他にも色々ありますが、今日はここまでにします。当院には、急性・重症患者看護専門看護師が2名もいます。二人で皆さんに活用していただけるように考えていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。